暇が過ぎたので念願の自作ラーメンを何回か試作してみたしづきです。
流石に麺までは自作しませんでしたが、いつかチャレンジしてみたいと考えています。
何回か作ると割と本格的なスープが出来て、美味しいかつ楽しい時間になりました。
さて、自作ラーメンはもうちょっと上手になったら記事にするとして、今回の記事はスープのキモであるお出汁。
ラーメンスープを作る上で「かつお出汁は厚削りの節から取ると本当に美味しい」という知見を得ましたが、それ以上に美味しい出汁を取りたい!!
究極のだしとはなにかを考えた末に、混合だしの組み合わせに着目することになりました。
結構長い内容の記事ですので、結果だけ知りたい方は↓の目次から結果発表をタップしてください!
目次
お出汁の基礎知識
前提として、「出汁の取り方色々」と「お出汁は何故美味しいのか」を確認してみましょう。
お出汁の取り方
お出汁はティーパックのお茶と同じように「煮だし」と「水だし」の2通りの取り方が主流とされています。
出汁の素材を鍋に入れ、お湯で煮だす取り方。
水出しと比べて調理時間が短く、そのお味は素材の旨味が強く出る反面若干の雑味が出てしまう為、煮物やタレなどの濃い味料理に最適です。
出汁の素材を見ずに漬け、長時間放置する取り方。
煮だしと比べて調理時間が長く、雑味を抑えた上品な旨味が染み出します。お吸い物やお茶漬けなど、出汁そのものを楽しみお料理に最適です。
ラーメンスープを作る時は、水出ししたうえで煮だしたりもしますが、あまり一般的な例ではないと思いますので、今回は割愛します。
個人的には何にでも使える水出しの方が好みですが、濃い味の料理に転用した際は調味料の味に負けてしまう感は否めませんね・・・。
お出汁は組み合わせると美味しい!
次に「お出汁はどうして美味しいのか」についてです。
19世紀の初頭まで「旨味」の存在は科学的に立証されていませんでした。
その後日本の学者は、経験則から人が旨味と感じる成分が大きく分けて3つのアミノ酸によるものだと解明しました。
その3つのアミノ酸の特徴を簡単に紹介します。
・グルタミン酸・・・昆布や野菜、チーズなどの発酵食品に含まれるアミノ酸。
味の素などのうま味調味料は代替これを際立たせたものです。縁の下の力持ち。
・イノシン酸・・・鰹節や煮干し、肉などの動物性たんぱく質に含まれるアミノ酸。
そばつゆやとんこつスープに現れているように芯のある強い旨味です。
・グアニル酸・・・しいたけなど、きのこ類に含まれるアミノ酸。
煮物の旨味を彷彿とさせますが、ポルチーニ茸やトリュフに見られるように洋食でも頻繁に登場します。
そして、これらの旨味成分を掛け合わせることにより、お互いの旨味を高め合い、より強い旨味を引き出すことが知られています。
これを巷では「味の相乗効果」と呼ぶようです。
お出汁素材の特徴・究極のお出汁を作る<準備編>
ともすれば、色々なお出汁を組み合わせまくったら究極の出汁ができるのでは??
独断と偏見もいいところですが、そう思い立ってお出汁の素材を6種類用意しました。
計算してみると、6種類の素材で57通りの組み合わせができるようです。
その中で一番美味しい組み合わせを決めてしまおうという、我ながらなかなかハードな検証記事になっています(笑)
検証にあたってのルールを設定しました。
なお、水出しの時間はしっかり出るように36時間と長めにとりました!
それでは究極のお出汁を担う選手を紹介します!
昆布
グルタミン酸部門からは、王道の昆布が参戦しました。
昆布の種類によってもグルタミン酸の含有量に差があるみたいですが、予算の都合上すぐに手に入る日高昆布の選択に落ち着いた次第です。
「旨味の相乗効果」のロジック通りに考えるならば、グルタミン酸は究極のお出汁に必ず入ってくるのではないかと考えています(笑)
単体のお味は・・・
青くっさ!!
湯豆腐や水炊きなど温かいお鍋のお味を彷彿とさせますが、単体で、しかも常温で頂くと舌の上に大海原が広がります。
ま、まあ単体で使用する事があまり少ない「縁の下の力持ち」ですし、、そんなもんですよね。
鰹節(厚削り)
イノシン酸部門から参戦しました。和食界では煮干しと風味の王座を争う旨味強者。
事前に検証してみたところ、やはり厚削りの鰹節の方が薄削りよりも色濃く旨味が出る事を実感しましたので、今回は厚削りを採用しています。
美味しいのですが、金額が結構するのがニクいやつです。
単体のお味では「いつものお出汁~」とどこか安心感のある旨味が出ていました。
今回の検証ではイノシン酸が数多く参戦していますので、その安心感が通用するのか・・・!楽しみです。
煮干し(いりこ)
こちらもイノシン酸部門から参戦した、独特な旨味が強いパワープレイヤー。
雑味を極限まで減らすために頭とわたは取り除いて使用することにしました。
煮だしでは独壇場のような気もしますが、水出しでもその強烈な旨味を発揮してくれるのか!
単体で味見してみたところ、全然普段通りパンチのある旨味を演出してくれていました。
トゲトゲしささえ感じる煮干しのパンチは、吉と出るか凶と出るか!
あごだし(トビウオ)
新進気鋭の流行り出汁。その透き通った上品な風味、そして凝縮された旨味は鰹節・煮干しの二大巨頭の座を耽々と狙っています・・・!
見てみるとわたは綺麗に取り除かれているようでしたので、頭ごといれちゃいました。
単体でのお味はしっかり強い旨味は出ているものの、煮干しほど荒々しくないお上品なお味で、どんな料理にも合いそうだなという印象を受けました。流行るのもうなづけます。
海上を縦横無尽に駆け回っていたあごは、「究極出汁」の海面に飛び出すことができるのか!?
鶏節
鶏のむね肉を使用した薄削り節で、こちらも主にイノシン酸部門のお出汁です。
薄削りの鰹節と同じく、そのまま食材にかけて頂ける代物。
あごだしと同じように上品な味わいが特徴で、お出汁にこだわる飲食店ではしばしば使用されている素材でもあります。
単体でのお味はほんのりと鶏肉特有のジューシーさがありつつも、それほど主張は強くない縁の下の力持ちタイプという印象を持ちました。
家庭ではあまり採用されることが少ないお出汁ですが、ダークホースとなるのか!
干し椎茸
イノシン酸部門の素材がひしめく中、グルタミン酸部門と同様に唯一のグアニル酸部門のお出汁です!
旨味もさることながら、その独特な強い香りはどう影響してくるのかが気になりますね・・・。
今回の割合は1:1に設定していますし、全てを煮物風味にしてしまいそうです(笑)
さて、単体でのお味・・・
くっさ!!!!
旨味とエグみは紙一重なのかもしれませんが、単体かつ薄味の料理ではまず使わないであろう香りでした。
舌の上に残る香り強さの余韻後に「あ、茶わん蒸しの後味だ」となる不思議な経験をしました。
究極のお出汁を作る<味見~結果発表>
しいたけのくささの衝撃も通り過ぎ、そんなこんなで57通り全ての組み合わせを試してみました。
今度なにか自己紹介をする機会があれば「出汁の飲みすぎでお腹がいっぱいになった経験がある」と豪語することにします。
さて、ベスト3を発表する前に色々試してみて得た知見をお伝えしたいと思います。
■鶏節の立ち位置と相性
すごく不思議なお出汁でして、掛け合わせる素材によってその合わせ出汁の旨味を「全てボヤけさせる場合」と「後味を超持続させる場合」があるという両極端の性質を持っていました。
具体的な組み合わせとしては、イノシン酸が多ければ多いほど相性が良く、昆布だしが基礎のお出汁は味がボヤける印象です。
■干し椎茸の立ち位置と相性
懸念していた通り2種類以下の組み合わせでは香りが強すぎて味見の度に悶絶する程度でしたが、お出汁の種類が増えれば増える程しいたけの奥深さが必須になるという知見を得ました。
正確には5種類以上お出汁を組み合わせた際に、しいたけの風味と旨味が濃厚さを飛躍させるといった印象です。
■あごだしについて
何度も先述しているように、強い香りと独特な旨味を持っているしいたけを除くと、意外にも3種類以下では他の素材と一番相性が悪かったのがあごだしでした。
もともとこれ一つで鰹節の優しい味わいと煮干しの強さを包括している出汁ではありますので、これと昆布と合わせるとそれだけでお手軽万能だしになります。それほど単体の旨味が強い出汁です。
しかも単体ではかなり上品な味わいですから、「一歩引いて見ると個性的な出汁」だなと感じました。
以上3点、普段あまり選択しない出汁についての考察になりましたね。
お出汁を選ぶ際には是非参考にして下されば幸いです!
それでは待望のベスト3を発表します!
図らずも同率3位が出てしまいましたので、4種類の組み合わせでの発表となってしまいました(笑)
第3位
昆布×しいたけ×鶏×煮干し
顆粒だしの旨味を格段に向上させたような万能型のお出汁です!!
芯のある強いお味はブレることがなく、そのまろやかさはどんな和食にも合うと思います。
荒々しく強い旨味の煮干しの下地を昆布が支え、しいたけがその濃厚さを深め、その雑味やエグみなどの悪目立ちする部分を鶏が消した上に残った旨味を持続させてくれる。そんなお味でした。
鶏節の「味をボヤけさせる」特性が良い意味で働いた結果この出汁が完成しました感じがしますね。
第3位(タイ)
鰹×しいたけ×鶏×あご
口に入れる時にはスッと入ってくるのに、ちょっとすると旨味の塊のようなものが口の中で弾け、ずっととどまり続けるお出汁ができました!
お鍋のように具材の美味しさを直で感じられ、後味でほっこりできる料理に使いたいですね。
3位の内容を見てみると、しいたけと鶏節の相性が非常に良い事が分かりました。
また、あごだしは煮干しと比べてじんわりと旨味を発揮するものなんだと思います。とってもお上品。
後で見直してみると我ながらひどいネーミングセンスだとは思いました(笑)
第2位
超濃厚魚介出汁 通称:魚3とり
鰹×煮干し×あご×鶏
イノシン酸オンパレードのお出汁です!お味は非常に分かりやすく、口に入れた瞬間から魚介の旨味が騒ぎ出します。
後味はそんなに長く継続せず、強い旨味をガツンと発揮してすぐに帰っていく感じですね。
ラーメンや中華スープにピッタリの旨味です!
煮干しとあごだしは似た系統でありながらそのお味は全くの別物ですので、そういう部分で相乗効果が発揮されたのではないでしょうか。
また、今回の鶏節はボヤけさせるわけでもなく、持続させるわけでもありませんでしたので、ちゃんと鶏の旨味が魚3種と見事にマッチしたという、私の中では結構特殊な事例が起こっていました。
究極出汁
昆布×鰹×煮干し×鶏×しいたけ×あご
結局~~~~~~。
なんでしょう、結局6種類全部混合した出汁が一番美味しかったです。
なんというか足りないモノがなにもなくって、口に入れた時からずっとおいしいし、味もボヤけていなかったし、むしろこれがお出汁なんだなあって、そう思いました。
でも、混合する数が多ければ多いほど良いというのは少し早計かもしれません。
というのも5種類混合した6通りの組み合わせのお出汁はおいしいけれど、どこか没個性で、しいたけと鶏がどちらかいないだけで違いが分からないほどでした。
6種類の組み合わせの中で6種類組み合わせるのが一番美味しいのはたまたまなのか、素材を追加して検証してみたいところでもあります。
検証で余った出汁は鶏ガラを加えて自作ラーメンにしました。お店の味に匹敵します!
まとめ
なんとも想像通りの結果になってしまいましたが、「味の相乗効果」が実在すると証明できたような気分です!
また、意外にも全ての出汁のベースとなると考えていた昆布だしが必ずしも必要ではない事に驚きを隠せません(笑)
世の中にはまだ試したことの無いような出汁があふれていますので、これで究極と名乗るのは正しくはないと感じています。
なので「味の相乗効果」を実感した今、これに満足することなく更なる究極出汁を探しに行こうと思う次第です。
1:1という比率にこだわるのではなく、際立たせたい旨味に比重を寄せるべきでもありますね。
でも、今回ランクインしたお出汁はどれも美味しいので是非試してみてくださいね!
(全然お手軽ではありませんが・・・。)
そしてこれらで作ったお料理も発信していきますので、Twitterも是非ご覧ください!
でもやっぱり、用途によって引き算していく事も大事だな~と根も葉もないことを残して文末とします。